THE DISCOVERY NOTEBOOK

はっけんノート

いつもの葉っぱに、ひとつの「なぜ」。
バジルの写真と観測から、育つしくみをひもときます。

バジルの葉・香り・花の特徴を知り、写真や観測記録を読むための入り口を案内します。育てながら確かめたい疑問を見つける、はじめてのはっけんノートです。

はじめてのノート

9編

写真・水やり・気づきを残す観察シート →

予想が変わると、見え方も変わる。

「なんで?」のたね、見つけよう。

さわる → あれ? → なるほど。8つの小さな実験で、見方を変えてみよう。

ほんとうにあった記録

タンクは空っぽ。
でも、土はしっとり?

9月19日 17:00の記録
水位 0 ml / 土の数字は、のぞいて確認

数字が食い違っている? それとも、両方ありえる?

あ! 2つの数字は、測っている量そのものが違う。

タンクの水位は「貯めてある水の体積」。いっぽう土の湿りは、根のまわりの水分を考えるためのセンサーの参考値だよ。このサイトでは型番・測定原理・校正条件を確認できていないため、体積含水率や飽和度そのものとは断定していません。測っている場所を分けて読むことが出発点です。

さらに、根が水を吸えるかどうかを決めるのは含水率そのものではなく、水がどれだけ強く土に引きとめられているか(水ポテンシャル)。同じ含水率でも、砂と粘土では吸いやすさが違うよ。

表示の100%と、土のすきまが全部水で埋まった状態(飽和)との対応は未確認です。この数字だけで水やりの要否を決めないでください。

考え方のたね:数字を見る前に「何を、どこで、どんな原理で測った?」

次は水位と土の湿りを重ねて、同じ動きをしているか探してみよう。

2つの数字を見比べる →

もしも、で考えてみよう

同じ10分なら、
光の量も同じ?

A:1,000 luxで10分
B:10,000 luxで10分

1,000 lux以上を数える設定では、「光の照射時間」はどちらも10分。植物が受ける光まで同じかな?

あ! 積算は、強さを時間で積み上げた量。

届いた光の量は「強さ × 時間」で決まるよ。グラフの黄色い面積がそれ。時間だけを数えても、面積は決まらないんだ。強さが時間とともに変われば、面積は積分で求めることになるね。

植物が光合成に使えるのは、波長がおよそ400〜700 nmの光(光合成有効放射、PAR)。その瞬間の強さをPPFD(μmol/m²/秒)、1日ぶんの積み上げをDLI(mol/m²/日)と呼ぶよ。

luxは人の目の感度(比視感度)で重みづけした単位だから、光源のスペクトルが分からないとPPFDには換算できないよ。「強いほどよい」とも決められない。

考え方のたね:瞬間の強さと、時間で積み上げた量を分ける。時間と光の積算を見比べる →

写真の、ひっかけ問題

写真の葉っぱが2倍!
ぐんぐん育った証拠?

よく見ると、写真の中の鉢も2倍の大きさ。

植物が育った? カメラが近づいた? この写真だけで決められるかな?

あ! 比べるには、画面のなかに基準がいる。

カメラが被写体に2倍近づくと、写る大きさはおよそ2倍になるよ。見かけの大きさが距離に反比例するからだね。だから1枚の写真からは、植物が大きくなったのかカメラが近づいたのかを区別できないんだ。

同じ鉢が同じ向きで写っていれば、鉢を基準の長さ(スケール)として「鉢の直径の何倍か」で比べられるよ。長さそのものではなく、比で見るのがコツ。

レンズの焦点距離や撮る角度が変われば、写り方のゆがみも変わるよ。「この写真だけでは決められない」も、りっぱな結論。

考え方のたね:変えた条件と、そろえた条件を分ける。

成長日記から同じ角度の写真を2枚探そう。次に撮るときは、位置と距離をそろえてみよう。

写真の「ものさし」を探す →

平均の、かくれんぼ

平均26℃なら、
ずっと26℃だった?

26℃と26℃。14℃と38℃。2つの数字の平均は、どちらも26℃なんだ。

あ! 平均が同じでも、ばらつきは同じとは限らない。

ばらつきの大きさは、平均からのずれを2乗して平均した分散や、その平方根の標準偏差で表せるよ。26℃と26℃なら標準偏差は0℃。14℃と38℃なら12℃。平均はどちらも26℃なのに、中身はこれだけ違うんだ。

最大値・最小値とその差(範囲)、高い値が続いた時間も、平均とは別の情報を持っているよ。

考え方のたね:代表値だけでなく、ばらつきも一緒に見る。温度の山と谷を探す →

いっしょに変わる、その理由

明るさも温度も上がった。
光が犯人?

2本の線がそっくり。でも、同じ動きだけで原因まで分かるかな?

あ! 相関があっても、因果とは限らない。

2本の線が似た動きをすることを相関というよ。でも相関があっても、片方がもう片方の原因とは限らないんだ。両方を同時に動かした第三の要因を交絡因子と呼ぶよ。ここでは時刻や置き場所が、その候補になるね。

原因を確かめるには、ほかの条件をそろえて、変える条件をひとつだけにした対照実験が必要だよ。

考え方のたね:相関と因果を分ける。第三の要因を疑う。

まず、その時刻の置き場所や機器の記録を探そう。確かめるときは、一度に変える条件をひとつに。

実際の2本の線を見てみる →

見えていない時間

朝も夕方も25℃。
お昼も25℃だった?

測れたのは2回だけ。その間の線を、1本に決められるかな?

あ! 線が描けることと、測ったことは違う。

点と点のあいだを線でつなぐことを内挿というよ。内挿は「こう変化したと仮定する」という約束ごとで、測っていない時間に何が起きたかを決めるものではないんだ。

見のがしを減らすには、測る間隔を変化の速さより十分短くすること。間隔が粗いと、速い変化は記録に現れないまま消えてしまうよ。

考え方のたね:測った点と、仮定でつないだ線を分ける。

グラフを見るときは、点の間隔と欠測にも注目してみよう。

記録の間隔を確かめる →

ほんとうにあった記録

葉が垂れてきた。
やっぱり水切れ?

9月22日 11:00の記録
土の湿り 100% / 温度 27.3℃ / 湿度 76%

大きな葉ほど下を向いている。でも新芽は元気で、葉の色は緑のまま。土も湿っているのに、どうして垂れるんだろう?

あ! 水は「入る量」と「出る量」の両方で決まる。

葉の気孔から水が水蒸気になって出ていくことを蒸散というよ。出ていく速さは、葉の中と外の水蒸気の差(飽差、VPD)と、気孔の開き具合(気孔コンダクタンス)の積でおおよそ決まるんだ。

いっぽう根からの吸水は、土から葉へ向かう水ポテンシャルの勾配と、根や茎の通しにくさで決まるよ。出ていく速さが吸える速さを上回ると、葉の膨圧が下がって垂れて見える。土が湿っていても起こることなんだ。

出典:ウィスコンシン大学エクステンション「Reasons Why Plants Wilt」

土がしっかり乾いている、新芽までぐったりしている、葉が黄色い・茶色いときは、水切れや根のトラブルも考えられるよ。葉の見た目だけで決めず、土の状態と合わせて確かめよう。

考え方のたね:出ていく量と、入ってくる量。両方を見る。

垂れていた時間帯の温度と湿度を重ねると、環境との関係を探せるよ。

温度と湿度を見比べる →

ほんとうにあった記録

朝は元気。
9時に、しおれた?

9月21日の記録
5時 24.3℃・湿度70% / 9時 36.7℃・湿度55%

土の湿りは93%のまま。水はあるのに、日がさしてしばらくすると葉が下を向く。葉のどこで、なにが起きているんだろう?

あ! 葉は小さな口を開け閉めして、水と二酸化炭素を天びんにかけている。

気孔は、2つの孔辺細胞にはさまれた小さな口だよ。光が当たると孔辺細胞にカリウムなどのイオンが入り、水を吸ってふくらんで口が開く。開けば二酸化炭素を取り込めるけれど、同時に水も出ていく。空気が乾いているほど出ていく量は増えるから、植物は口を閉じぎみにして水を守るんだ。

出典:バジルの気孔を調べた研究(PMC)

この模型は「開く・閉じる」の考え方を見るためのもので、気孔の開き方を測ったものではないよ。土がしっかり乾いている、新芽までぐったりしているときは、水切れや根のトラブルも考えよう。

考え方のたね:同じ「しおれ」でも、土の水と、空気のかわきは別の原因。

もっとくわしく知りたくなったら、はっけんノートの記事も読んでみてね。

葉の小さな口、気孔のはなし →